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-NAKAMURA LAW OFFICE-      

リレーコラムCOLUMN

2018年

ラジオの声  弁護士 吉田誠司               

 ラジオを聴きながら勉強する「ながら族」学生ではなかったのですが、いつの頃からか、私はラジオが好きです。特に、キャンプでテントの中で寝袋に入って聞く深夜のラジオがたまりません。自然の中での孤独感と、どこかで人と繋がっている安心感とがない交ぜになり、何ともしんみり来るのです。

 我が家では、毎朝、家族皆でラジオを聴きながら朝食をとります。テレビのワイドショーがつまらないのもありますが、私はラジオのアナウンサーの声が聞きやすくて好きなのです。テレビをつけ放しで家事や作業をすると分かるのですが、テレビはやたらと派手な効果音や意味のない笑い声を出し、喋っているタレントの話し方も早口だったり身振りに頼っていたりして、情報が耳だけでは伝わってきません。視覚に相当多くを依存しています。ラジオはそうではなく、「耳に届ける」という明確な覚悟で運営しているので、アナウンサーやパーソナリティの声は、とても聞きやすいのです。ニュース番組においてすら、テレビとラジオのアナウンサーにはハッキリ腕の差(声の差?)があります。プロだなあと思います。

 ある朝、ラジオを聞いていて、アナウンサー達が興味深い取り組みをしていることを知りました。「緊急性を伝える声を出す」というものです。東日本大震災の報道からの反省だそうです。アナウンサーは通常、どんなときも一定の速度と音量で、冷静に話す訓練を経ています。しかし津波の危険が迫っていたとき、意識的に慌てた声を高く張り上げて、「危ない、早く逃げて!」というメッセージを繰り返し伝えることが出来ていたら、もっと多くの命を救えたのではないか、と反省しているのです。言葉を正確に伝えることだけではなく、メッセージを明確に伝えることも、私達の仕事なのだという、そのプロ意識に私は感動してしまいました。

 私達弁護士も、ある意味で声を使う仕事です。人を説得するとき、聞き入るとき、質問をするとき、言いにくいことを言わせるとき、たしなめるとき、主張するとき・・・それぞれのシチュエーションごとに最適な声があるのだろうと思います。見習っていきたいと思います。

【平成30年1月記】


民法の改正(その2 消滅時効の変更)  弁護士 平尾嘉晃

いよいよ、東京オリンピック開催の年・2020年4月1日から、改正された民法が施行されます。今回の改正では、消滅時効制度が大きく変わりますので、以下、簡単に要点を解説します。

 これまでの民法では消滅時効は権利行使ができる時から10年とされていました。ただし、これには例外が多くあり、時効期間が何年になるのかが一見して判り難いものでした。例えば、商行為の場合は5年、賃料は5年、商品売買代金は3年、飲み屋のつけは1年etc. 

  今回はこのような例外をすべて廃止するとともに、時効期間を統一化することとしました。

~新しい条文~  
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
ただし、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については「10年間」とあるのを「20年間」とする。)

    このように新しい法律では、一律に「知った時」から5年間、知らなくても「権利を行使できる時」から10年間という期間に変更されましたので、かなりシンプルな制度になったといえます。ただし、皆さんもよくお聞きの残業代請求の消滅時効については、労働法規の改正は今のところありませんので、これまで通り、未払給料や残業代の請求権は2年間の消滅時効期間となります。ご注意ください。

 ほかに、新しい法律では、債権者と債務者が話し合いをしている間時効の進行をストップさせる制度が新設されました。これを「協議を行う旨の合意による時効完成の猶予」といいます。この合意については書面(メール等でもかまいません)でなされる必要があります。合意をすることによって1年間消滅時効の完成を遅らせることができます。これまでは、債権者から、時効中断させるためには訴訟提起という方法しかありませんでしたが、選択肢が一つ増えることになります。

【平成30年3月記】



チームTOSHIO  弁護士 宮﨑純一

 平成30年3月をもって、1年間の京都弁護士会副会長職が無事終了しました。皆様には1年間大変ご迷惑をお掛け致しました。本年4月から、本業の弁護士業務に邁進していく所存です。

さて、今月8日、当事務所のメンバーで「宝ヶ池リレーマラソン」に出場しました。宝ヶ池リレーマラソンとは、1週2㎞の宝ヶ池の周りをリレーしながらみんなで約21週走るというものです。みんなで力を合わせて、合計42.195㎞を走るわけです。当事務所の弁護士だけでなく、事務局も走ります。子ども等家族や元事務局も走ったりもします。当事務所のリレーチームの名前は、「チームTOSHIO」です。このチームTOSHIOの名前は、故中村利雄先生に由来します。

チームTOSHIOの宝ヶ池リレーマラソンの出場は、今回で3回目になります。平成27年秋に初参加し、記録は4時間4分09秒でした。2回目の参加は、平成28年秋で、記録は3時間58分52秒でした。そして、平成30年春、チームTOSHIO は3回目の出場を果たし、記録は3時間58分09秒で、ベストタイムを記録しました。
 これもメンバーみんなの日頃の鍛錬の成果といえます。リレーマラソンの醍醐味は、本番までにいかに地道な努力を重ねるかにあります。誰も見ていない地味なところで、ひたむきに努力することこそが心と体を鍛えます。

思えば、弁護士業務も同じなのかもしれません。たしかに、判決の勝ち負けの結果は極めて重要です。しかし、判決の勝ち負けが決まるのは、判決の瞬間ではなく結果に辿り着くまでの日々の地道な作業であったりします。丹念な事実関係の聴き取り、裁判例や文献の調査、現場の確認等地味な作業の積み重ねこそが結果に繋がるのだと思います。

チームTOSHIOは、故中村利雄先生が平成27年4月4日に亡くなられてから発足し、宝ヶ池リレーマラソンに出場するようになりました。そして、故中村利雄先生が亡くなられて満3年にあたる平成30年4月に、チームTOSHIOは3回目の宝ヶ池リレーマラソンを走り、ベスト記録を出すことができました。そんなチームTOSHIOの団結力をみて、故中村利雄先生も、天国で、梅入り芋焼酎を飲みながら微笑んでくれていると思います。

当事務所は、これからも事務所一丸となって地道に弁護士業務に精進して参りますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

【平成30年4月記】


法廷小話   弁護士 佐藤建

法廷は弁護士が活躍する場の一つ(法廷の外でも活躍しています!)ですが、法廷、と聞いて皆さんはどのようなイメージが頭に浮かぶでしょうか。

時代劇などで「お白洲」に馴染んでいるせいか、法廷は「真実」が明らかになる場である、というイメージが強いようにも思いますが、他方で、裁判沙汰を嫌がる国民性故か、現在の日本における法廷の様子はあまり知られていないようにも思います。そこで、このコラムでは、現代日本の法廷の「真実」をお伝えしようと思います(大層な書きぶりですが、小ネタです。)。

まずは法廷での着席位置です。法廷の中央真正面にある高い席(法壇=ほうだん)に裁判官が座っているのは、ニュース映像やドラマでもよく目にすると思います。裁判員裁判の場合には、ニュース映像では空席ですが、裁判官の両側に裁判員の方々が座ります。

法壇の手前で、裁判官と同じ方向を向き、裁判官と同じような黒い服を着て座っているのは、法廷でのやりとりを記録する書記官です。ニュース映像ではあまり見かけませんが、書記官の隣に、証人等の発言を記録する速記官が座っていることもあります。

法廷の中央には、裁判官と向き合うように証言台があります。そして、この証言台を挟んで互いに向かい合うように置かれているのが裁判の当事者の座席です。どの席に誰が座るのかは裁判官が決めるため、当事者の着席位置は法廷によって違いますが、訴えを起こした側(民事訴訟であれば原告、刑事訴訟であれば検察官)が裁判官から見て右側に、訴えを起こされた側(民事訴訟であれば被告、刑事訴訟であれば弁護人)が裁判官から見て左側に座る、という伝統(?)があるそうで、以前はこのような着席位置の法廷が多かったと思いますが、現在は着席位置が逆転している法廷(逆転法廷、とでも言うべきでしょうか。)も多いようです。ちなみに、法廷での着席位置の悩みは万国共通のようで、アメリカの質問サイトにも「原告は左右どちらに座る?」という質問がありました(やはり「法廷による」ようですが、陪審法廷では、陪審員を説得しなければならない方=訴えを起こした側が、陪審員に近い席に座る、という回答が書き込まれていました。)。

刑事事件の被告人は、証言台の後方で、裁判官と向き合うように座っていることが多かったのですが、最近は、弁護人の座席の前に座ることが多いようです。

次は木槌です。日本の法廷では、裁判官が木槌を叩くことはありません。諸外国では、裁判官や会議の議長が、注意を集めるために「ガベル」という木槌を叩く、という文化があるようですが、礼儀正しいお国柄の日本では、そのような道具を使わなくても秩序を保てるのだと思います。この木槌のネタは、見学者向けの説明でもウケがいいのですが、木槌に関する誤解を広めてしまうような広報活動(裁判所が人材募集のために利用しているキャラクターは「どこかでなくした木槌を探して裁判所の法廷に舞い降りた妖精」で、その特技は「木槌叩き」だそうです。詳しくは「さいたん」で検索してみて下さい。)を裁判所が自らするのはどうかと思います。

最後は、海外ドラマの法廷場面でよく見るウィッグ(かつら)を、と思いましたが、これが日本の法廷で使われているか否かを明確には知りませんので、この記事はここまでとしておきます。

【平成30年5月記】


"What do you do?"   司法書士 桝田美佳子

 今年5月から英会話を習い始めました。講師はすべて外国人、レッスン中はAll Englishです。日本人同士でもそうですですが、初対面の相手との自己紹介、「お仕事は何ですか?」、聞きますよね。この質問への返答が悩ましいのです。

Lawyer」「Engineer」「Shop assistant」などは万国共通、誰でも知っている職業です。司法書士の英訳を辞書でひくと「Judicial scrivener」とでてきます。これは単に「司法」→Judicial、「書士(代書人)」→Scrivener と単語を直訳しただけのものなので、“Judicial scrivener”と答えたところで、「あ、Judicial scrivenerね」って仕事を理解してくれる外国の方はいません。日本人でさえ、司法書士がどんな仕事をしているのか知らない人も結構いるのですから当然です。

「不動産や会社の登記をする専門家」を英訳して答えたところで、どんな仕事をしているのかの説明にはなっていません。そこで「例えば、あなたが不動産を購入したい場合…」、「例えば、あなたのご家族が亡くなって被相続人名義の不動産があったら…」などと具体的な事例をだして説明するのですが、他国は同じ登記制度ではないでしょうし、私の英語力の壁もあり、いまいち司法書士の仕事を理解してもらっていないのがわかるので、“What do you do?”と聞かれるといつも返答に躊躇してしまうのです。

外国の方にはなじみがない職業「Judicial scrivener」ですが、外国の方の不動産購入が増えてきた今、私たち司法書士にとっては、渉外登記(国内・海外の法律事項を対象をした登記)の知識は必須のものになりつつあります。

 日本の登記制度は、戸籍や印鑑証明書など日本の公的機関で取得できる公的文書の提出が原則です。外国の方はそれらに代替する文書の入手に時間がかかる場合が多く、またどんな文書が代替文書になるのかはケースバイケースです。
 不動産が関係する取引や相続、遺言等のご相談は、お早めに司法書士までどうぞ。

【平成30年6月記】


数字が曖昧にしてしまうこと  弁護士 吉田誠司

 2108年は災害の多い年でした。大阪や北海道での地震、7月の豪雨、そして何回も襲ってきた台風。時間雨量何ミリとか、最大風速何メートルとか「記録的な数字」が飛び交いました。怪我をしたり亡くなった方の「数」もよく報道されました。こうした数字は、ものごとを明確に示すはずなのですが、そうではないときがあります。

災害や戦争での死者の数は、あまりにも多いために人間の感覚をおかしくしてしまいます。私がこれを思い知ったのは、沖縄の摩文仁(まぶに)の丘を初めて訪れた時でした。ここは沖縄戦で米軍に追い詰められた日本軍が最後に司令部を置いた場所で、今は平和祈念資料館が建っています。沖縄戦では激しい地上戦が繰り広げられ、軍人、民間人合わせて20万人以上の死者が出ました。この中には米軍側の1万人以上の死者も含まれます。この数字を皆さんは、どう感じますか。知っているどこかの市の人口と比較したりするでしょうか。多いとは分かるでしょうが、きっと実感は出来ないでしょう。

摩文仁の丘には平和の礎(いしじ) という石碑が列んでいます。碑には沖縄戦で亡くなった20万人以上の人の名前が国籍を問わず一人ずつ刻まれています。碑面いっぱいに名前が刻まれた黒い石碑が、広い丘に延々と、延々と、並んでいます。時折、ある碑の前で手を合わせている人や名前をなぞっている人、手向けられた花が置かれているのを見ました。一家の全員が亡くなったと思われる名前の連なりや、子どもが亡くなったのだなと思われる刻銘もありました。圧倒的な人々の名前に囲まれながら、ここを歩いたとき、私は戦争の被害者がどれほど多かったのかを、初めて実感しました。死んだのは数字ではなく、ひとりひとりの人です。数字ではこの当たり前のことがかえって曖昧になってしまうのです。

戦争は是非もなく悲惨です。「必要な戦争もあるかも知れない」「近代の戦争は最小限の犠牲者で済む」などという考え方、数字によって曖昧にされていた思考は、ここへ来れば一瞬で吹き飛び、自分が恥ずかしくなります。この摩文仁の丘を訪れるべき人は多いような気がします。どうか来年が穏やかな年でありますように。

【平成30年12月記】


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